【花輪和一エッセイ漫画原作『刑務所の中』】気になる刑務所暮らし映画紹介
こんにちは。
アルフォートは「青」派のみうのしんです。
ひょんなことから
刑務所暮らしを垣間見るため
7月は「刑務所」をテーマに
映画を毎週紹介しています。
安心してください。
ミチバナらしく、
気持ちがちょっと楽しくなるようなものを選んでいますよ。
『刑務所の中』
あらすじ
刑務所暮らしを覗けます。
小さな畳の部屋におじさん5人。
毎日、きちんと出される食事を楽しみに
「今夜の春雨はすごいよ。ビューだよ!ビューだ!」
と和気あいあい。
この映画、けっこう中毒者を出しています。
わたしもそのひとり。
その中毒ポイントを中心に紹介していきます。
原作は「異色の獄中記漫画」
正直、めちゃめちゃ和みます。
謎に癒されます。笑
もしかして、刑務所暮らしって
そんなに悪くないのかも。
そう思わせられる映画です。
原作は、漫画家の花輪和一氏のエッセイコミック。
実際に
銃砲刀剣類所持等取締法などで、
懲役3年の実刑を受けた花輪氏が
出所後、
自身の記憶を元に
北海道の獄中生活の実態を
おもしろおかしく描き
「異色の獄中記漫画」として話題になった。
とのこと(Wikipedia参照)
映画化にあたって
基本的には漫画のテンションを
忠実に再現していますが
受刑者同士のトラブルや
放送禁止用語を言うシーンは
あえてカットしているようです。
そのため
ドキドキハラハラするようなシーンはなく
内容は淡々と穏やか。
いいテンションなのです。
人間ってこうだよなあ。個性的な人間たち
否定してるわけではないんですけど、
なんだか昨今の
「こうすればデキる人間だ!こうすれば好かれる!」
みたいなウソかホントかもわからない技で、
誰かが決めた完璧人間を
目指そうとさせる風潮って
あるじゃないですか。
言われてないけど
感じる時とかあるじゃないですか。
いやいや、そうじゃないよ。
人間は不完全で完全なのだよ。
とわたしは言いたい。
「仁義」を「仁議」と
まちがって彫ってしまった受刑者や
小指を立てがちなおぼっちゃま受刑者。
なんでも報告してかわいがられたい受刑者。
などなど。
この作品にはクセの強い人間たちが
たくさんでてきます。
この映画に出てくる人間たちは
(みうらじゅんさんのお言葉をお借りして)
「そこがいいんじゃない」という人間らしさがつまっています。
つい笑ってしまう人間らしさに
ヒト(ホモ・サピエンス)への
愛おしさが芽生えてきます。
人間ってこうだよなあ。
おいおい…そういうとこだぞ。と
思うことを言う人間もでてきますが
その言い方や、それを聞いている周りの
人間の表情をみていると
切ない気持ちにもなって
ハッとさせられます。
もちろん犯罪はいけないことですから。
キャストは、
山﨑努、松重豊、田口トモロヲなどなど。
味のある人たちが味のある受刑者を演じています。
椎名桔平演じるお医者さんの
リズミカルな診断シーンも楽しいし
ワンシーンしか登場しない窪塚洋介は
圧倒的な存在感で
不安定さを見事に醸し出しています。
独特なルール
自由に行動できない刑務所の中。
そんなことで怒られるの?と
思うようなことで怒られたり
急な腹くだりでも「願います!」と
許可を得てからではないとトイレにいけなかったり。
何かと面倒くさい様子。
しかし
こういった厳しい規律が、ちょっと滑稽。
しかもこの守らないといけない緊張感に対して
主人公のハナワが心の中で放つ
ゆるーい言葉につい笑ってしまいます。
いわゆる緊張と緩和です。
語り口が絶妙なのです。
また、登場人物たちの
普段の会話や所作などもリズミカルで、
その対比も心地が良い。
飯テロ!全然クサイ飯じゃない刑務所のごはん
娯楽の少ない塀の中。
やはり1番の楽しみは毎日の食事のようで、
食べ物の細かな描写に
思わず釘付けになります。
どれどれ。と
高みの見物をしていた私は
だんだん「あれ…。自分が食べているごはんよりもおいしそう…。」
と思ってしまう飯テロ映画でもあります。
しかも健康的。
月に6回あるパンの日。
のさらに特別なパンの日や
お正月料理を待ち遠しく回想しながら
話しているシーン。
『キッズ・リターン』をみながら
アルフォートとコーラを食する場面などなど。
いや、どう考えても
アルフォートとコーラの組み合わせは
絶対合わないはずなのに
やりたくなってしまう。
ちなみにビューとご飯を褒める言い方をするのですが
北海道弁で「良い」「素晴らしい」の意味だそうです。
この映画をみたら
きっとその日の夜ご飯を「ビューだ」と真似して
褒めたくなるでしょう。
映画の中で
主人公がしみじみと1日を振り返ったり、
窓から少しだけ見える景色をみて
物思いに耽るシーンがあります。
せわしない日々を過ごす私たち現代人にとって、
そのしみじみの時間を持つことの大切さや、
日々の暮らしの中で
見落としがちな
季節のうつろいを感じることの尊さを
思い出させてくれます。
笑えるし、
なんだか穏やかな気持ちにもなるので、
定期的にみてしまう中毒者続出の映画でした。
短編が合わさったような構成なので、
気軽にみることができるのでオススメですよ。
information
『刑務所の中』
原作『刑務所の中』著:花輪和一 / 監督:崔洋一 / 2002 / 日本